第十東予丸(東豫丸)沈没事故

 

  昭和20年11月6日午前9時30分頃、愛媛県今治市伯方町(旧越智郡伯方町)木浦六ッ瀬磯の
  沖合2キロの海上で、 瀬戸内海汽船鰹蒲Lの尾道・今治連絡船『第十東予丸(162トン)』 が、
  突風を受けて転覆沈没しました。
  愛媛県における海難史上最大の事故といわれています。

  事故後60年(平成17年現在))になり、ほとんどの方が知らない事故について書き残したいと思います。

 

  昭和20年11月6日朝、第十東予丸は乗客定員210人のところ、広島県尾道港から、
  済州島方面復員軍人約400人と一般乗客約180人、乗組員十数人の
  計約600人(定員の3倍)の乗客を乗せて、定刻より少し遅れの午前7時16分に出航した。

  この日は晴天であったが、海上は風が強く荒れていた。
  今治港に向かっていた第十東予丸は、午前9時30分頃、伯方町木浦六ッ瀬磯沖合を

  航行中、折からの突風を受けて、2、3回揺れると定員の3倍の乗客と荷物を満載していたために、
  復元力を失い、一瞬の間に転覆し海中に姿を消した。
  転覆直後、前方を航行していた、愛媛汽船の『鷹島丸』のほか、付近海上にいた漁船数隻が、
  現場に急行し、救助を開始した。ほどなく、伯方消防団の救助船と今治警察署員が乗り込んだ警察船
  『あさぎり丸』が出動したが、激しい風浪や、潮流のため、救助活動は困難を極めたが、
  各船の懸命な救助によって、乗船者の約4分の1の145人を救助した。

 
  写真の岬の先端が伯方町木浦六ッ瀬磯です。

   この磯には、慰霊碑(地蔵)が建っていますが、行く道が荒廃の為、行けませんでした。
   平成19年夏に行かれた方の情報では、少々危険(ロープで少し降りたり岩場の為)だが、行くことは可能だそうです。
   夏場は、行く道が草木に覆われているため、草刈鎌持参がいいそうです。

   尚、今治から木浦への船に乗ると、慰霊碑が見えるそうです。
   


  救助された遭難者のほとんどが、元気な復員軍人であった。一般の乗客は船内にすし詰め状態
  であったため、船と運命を共にした。
  伯方町では、役場内に、救護本部を設置して生存者の救護、収容し、衣類の提供、非常炊出し等、
  町を挙げての手厚い救護活動を行った。
  また、町内の砂浜は簡易の遺体安置所になり、町民の方は、大変ご苦労されたようです。

 

  現在、上記の磯に慰霊碑が建ってますが、危険で行く事ができませんが、
  木浦の
曹洞宗禅興寺に遭難し亡くなった方の位牌が丁重に祀られています。
  禅興寺の裏手に遺族の方が立てられた、慰霊塔もあります。

 

  この慰霊塔に行くには、わかりにくいところにありますので、禅興寺の御住職様に
  お聞きになって行かれるのが良いかと思います。

 

  事故がおこって、60年になります。助かられた方はもちろんの事、
  事故を知っている地元の方など高齢になってきていますし、
  戦後すぐの事故ですから、確かな状況というのがわかりません。

 私の聞いた話によりますと、上記に書いた『一般の乗客は船内にすし詰め状態』
  というのも、ちょっと違うように聞きました。
  事故当時の船というのは、船底近くに上等の客室があり、そこに軍人達は、
  いたのではないか?一般の乗客は、甲板などに乗っていて海に投げ出されたのではないか?
  ということを、聞きました。一般の方よりも、体力などがあり、また、一般の方の倍以上
  乗船していたのですから、軍人の方が助かったのが多かったのではないでしょうか?
  現在では、本当のことを知ることができません。
  しかし、事故があったというのは、事実であり、また、この事故が、
  愛媛県における海難史上最大の事故であったことには、変わりありません。

  津軽海峡の洞爺丸事故によって出来た、青函トンネル。
  宇高航路の紫雲丸事故によって出来た、瀬戸大橋。
  第十東予丸事故のために出来たかどうかわかりませんが、しまなみ海道。

  便利な、トンネルや橋の影には、それぞれの海難事故があり、犠牲になった方がいる事を、
  考えていたいと思います。

  犠牲者の皆さんのご冥福を心より祈ります。
  また、救助に尽力された方、当時の伯方町の皆様、ありがとうございました。
  私の祖父も犠牲者の一人です。
  皆様のおかげで、約20日後に遺体の一部が収容されて、
  葬儀も執り行うことが、出来たと母は言っております。
  私は、もちろん祖父には、会った事はありません。
  でも、祖父が亡くなったのが、伯方島であったことを、

  また、伯方島の方にお世話になった事を忘れません。

  ありがとうございました。

  最後になりましたが、今回伯方島で、お世話になった皆様、
  本当にありがとうございました。

 

   第十東予丸沈没事故の参考資料のページ

    曹洞宗 禅興寺様のホームページへ

  

 

   

  資料:伯方町誌・愛媛県警察誌

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